桃の向こう

桃の向こう

桃の向こう

読了。途中読んでいて非常に心が揺れた。こういう経験をするのは多分5年前タイのサメット島村上春樹の「ノルウェイの森」を読んだとき以来だと思う。なんだかぞくぞくするようでいて、わくわくして、読むのをためらう部分もあるのだけれども、結局読まずにはいられないという感じ。ただ、読み終わって、ちょっと量がたらなかったと言うか、結がこれでいいのか? と思うような終わり方であることは否定できないと思った。いろいろ考えてみたのだが、わからないうちに眠ってしまった(寮でクーラー掛けていたせいか)。恋愛と男性の友情をあわせた青春物語だが、95年〜2000年を舞台にしており、私の学生時代とほぼ一致する。


本のカバーの文章を引用。

頭でっかちで素直にになれない屈託男子と
自己中心的でノリが身上のお気楽男子に
生真面目で誇大妄想気味な一本気女子。
出会いから紆余曲折のその後の10年を描く、
バブル後の絶不調時に青春をおくった
すべての人々へお届けする、青春純情小説!

頭でっかちで論理的思考を好み、それが故に恋愛に対しても一歩引いてしまう男性(私で言えば生協学生委員会的行動型)と、自己中心的でグループリーダーをやったりする一方で他人が輪の中に入っていなければそれを気にするような男性(私で言えばSillyFox的行動型)がお互いを(というよりもSilly側が学生委員会側を)気になって、互いにひとりの女性と「恋愛/つきあい」をし、その後この男性2人がどうなるかというのが一つの大きな筋。生協学生委員会とイベント(クリエイト)サークルSillyFoxを掛け持ちし、両方の一見矛盾するような性格の2人がどう考え動くか、自分の学生時代とシンクロさせながら読んだ。自分に取っては学生時代は一つのエポックメイキングな時期だったので、非常に関心を持って読むことができた。だからこそ、非常によむのにドキドキしたのかもしれない。私の中では人がどう矛盾していようと自分は自分である。ありのままに生きたい。それが生きづらい方法であっても。いや、多分うまくやっていくのだろうけれど、根っこの部分は大切にしていきたい。

ただし、その相手の女性については途中から話がなくなり、消息を曖昧にしていることから結がたらんなあと感じたまでである。
その他、作者が兼業作家であることから仕事と言うものに対して今回も一言提言というか忠告がある。また別ブログで紹介したいと思うが、これが結局フリーターしていた男の成長につながってきており、うまく出しているなあと思う。平山瑞穂のおもしろいと思うところ(彼しか書けないところ)の一部ではあるけれども、これが実は重要であると感じる。