ちょっと前の経験から

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 ここで言うエンジニアがITエンジニアの様に読めたので、果たして私の体験が当てはまるかどうかわからないのですが、敢えて書きたいと思います。そもそも私はIndustrial Engineering -r (IE技術者)であり、簡単に言えば、メーカー勤務の技術を用いた改善推進者なので、合致するかどうかわかりませんが。


 私は、工場物流エンジニアです。原料関係担当の課長とオペレーター2名で「原料輸送コストの削減」をテーマに、3ヶ月の短期プロジェクトに携わりました。
 まずはコスト削減といっても何が問題かはっきりしていませんでした。今の日々の輸送状況(量や銘柄)について、課長もオペレーターも正確には把握していませんでした。そこで、まずこれらを図示することから始めました。把握していた人はそのときには誰もいません。ただ、電子データとして、「何をどこからどこの置き場までどのルートを通して何t動かした」というものが紙あるいは電子データ(1ヶ月で10000行のエクセルデータ相当)で残っているだけでした。このデータを管理しているのは物流子会社なのですが、子会社でもとりあえず言われていたからという理由で10年以上もの間、ただただデータとして残していただけでした。この子会社の課長や作業長は「原料関係担当部署の人(親会社)が、データをとっても全く解析すらしてくれないから改善もしようがない」と言っていたのを思い出します。そりゃそうです。そんなデータすらあることさえも知らなかったのですから。私がいろいろヒアリングをして初めてそんなデータがあることがわかったのです。それまで10年以上、ただ言われたからデータを取っていただけ。そのくらい放置された状態からのスタートでした。そこで、このデータを解析して「見える化=ルートと量のマップ表示化」することから始めました。
 見える化には1ヶ月近くかかったことを記憶しています。とにかくワークをする人が私だけでした。課長とオペレーターは日常の運用や管理があります。彼らは日常に追われていて新しいワークをすることが全くできる状態ではありませんでした。私は、この日々はつらかった。ですが、見える化の作業をすることによって、逆にいろいろな問題を明らかにすることができました。動いていない原料や回転率の悪い原料の存在、特定の輸送ルートに縛られている現状が見えてきました。そこで、改めてこのデータを見せてメンバーに相談をしました。
「動いていない原料はどこかにやれないのか?」
「回転率の悪い原料を買わないとかいうことはできないのか?」
「どうしたらこの特定ルートを減らせるのか?」
 当初課長は設備投資が必要なことや動かせない原料の移動コストが発生するために、改善を進めることを渋っていました。しかし、その上司である技術室長が、「これはいかん! ムダはなくせ!」と私の味方についてくれたことが大きかったです。
 この見える化の作業については、技術室長にも報告をしていました。メンバーだけではなく、その上司を含めて巻き込むことが、仕事上は実はよかったのだと後から考えると思います。その技術室長が中心になって、動いていない原料は他への売却など新しい販売ルートを見つけてもらいました。その結果、原料置き場を増やすことができました。
 また、ルートの問題は、問題提起をしたときには正直すぐに新しい改善案は出ませんでした。しかし、そのあとでコーヒーブレイクをしながら、世間話をしながらオペレーターと話をしていたときに、「いや、実はこれはずっと気になっていたんだよね」「このルートを逆転させたらいいんでないの?」というアイデアが出てきました。会議の場だけではなくて、ちょっとくだけた場を使って、頭をリフレッシュさせてやるとアイデアは出てくるものだなと言うことを改めて感じました。以前からブレーンストーミング(ブレスト)はよくやっていました。ただ、会議中にやることが多く、なかなかアイデアが出ないことが多かったのです。こうやって一度リフレッシュさせた状態で気楽にやる方がいい場合もあると言うことを実際にやってみて感じることができました。
 その結果、新しくベルトコンベアーを敷く(一部逆転することで投資額削減)というアイデアで攻めることになりました。


 この課長さんとは元々直の上司部下の関係であり、別の仕事で折り合いが悪かったこともありました。そして私の体調不良をきっかけにして私が部署を配置換えになり直接の上司部下ではなくなりました。しかし、今回の活動でオペレーターの意見を聞いて設備投資の申請をしていくうちに、納得してくれた面もあったのでしょう、私と一緒になって協力してくれました。時には私が曖昧にしていた部分をきっちり指摘してくださり、申請はほぼ問題なく認可を得ることができました。
 コンベアーの建設には設備停止や環境問題などのネックがあって都合2年近くかかりました。ですが、
「あの設備を作っておいたおかげで、本来の目的に使う以外の使い方をすることができて、その分で2億円以上のコスト抑止ができた。ありがとう」とオペレーターと課長から何度も言っていただけたのは、私に取っては大きな喜びでした。
 また課長とはこの仕事を通じて仲が良くなり、一緒に楽しくお酒を飲んだりする機会もとれるようになりました。その他、たびたびこの課長と一緒に仕事をすることがあるのですが、お互いにいい関係での仕事ができるようになりました。ある意味、うまくいった報われた仕事だったと思います。


まとめ

  1. ずさんな管理は意味が無い。整理解析してこそ意味がある
  2. プロジェクトにはメンバーだけでなく上司も巻き込むとよい場合がある
  3. ブレーンストーミング(ブレスト)は会議だけでなく、自由な時に自由な頭で
  4. やっぱり仕事といえども人間関係は大事